このページの要点
- 書面がなくても、出資と共同の事業の約束があれば契約は成立する。振込の記録、メッセージ、事業の資料が、約束の中身を示す材料になる。
- 出資者にも検査の権利がある。実際に開示を受けるには、期限と方法を決めた条項を契約書に置く。
- 出資金を取り戻す筋道は、合意、脱退、除名、解散の請求。戻る額は、その時点の事業の財産の状況に基づく。
- 揉めた後は、確認の覚書、変更の覚書、合意解約・清算の合意書のいずれかにまとめ、現在の状況を確認する条項を入れる。
結論:まず「何が決まっていたか」を、書面・記録・条文の順に確かめる
共同事業で揉めたとき、多くの人は、相手の行動の是非から考え始めます。使い込んでいるのではないか。帳簿を見せないのはおかしい。利益が出ないはずがない。しかし、最初にやるべきことは、感情の整理ではなく、何が決まっていたのかの確認です。契約書があれば、その定め。契約書がなければ、やり取りの記録。どちらも不十分なら、民法などの条文が、定めがないときの基準を与えます。この順に確かめると、自分の主張が通る場面と通らない場面が分かります。
このページは、すでに揉めている、または揉めそうな共同事業の当事者が、契約書の面から何を確認できるかを整理します。取り上げるのは、書面がないとき、帳簿の開示を拒まれたとき、出資金の返還を求めたいとき、利益が出ないとき、違約金や競業避止の条項が争いになるとき、そして、合意書や変更の覚書でまとめ直す方法です。なお、相手方との交渉の代理や、裁判手続そのものは、このガイドの範囲外です。ここでは、契約書の書き方と条文の読み方を扱います。
初動の流れ(一般的な例)
- 決まっていたこと契約書、覚書、メッセージ、見積書から、取り決めを集める
- 実際に起きたこと振込、帳簿、口座、取引の記録から、事実を時系列に整理する
- 食い違い決まっていたことと実際の差を、論点ごとに分ける
- 条文の基準定めがない部分に、民法などの基準を当てて確かめる
- 書面にする続ける、変える、終えるのいずれかを、合意書や覚書にまとめる
論点を、お金に関するもの(出資、費用、利益)、情報に関するもの(帳簿、口座)、関係に関するもの(脱退、競業)に分けると、整理しやすくなります。
それぞれの論点の背景にある契約書の書き方は、本ガイドの他のページに詳しく書いています。出資は出資の決め方、費用は費用負担、利益は利益の定義、帳簿は帳簿・口座、出入りは持分・脱退、終了は終了と清算のページです。このページでは、揉めた後の確認の仕方に絞ります。
書面がないとき:契約は成立しているのか、何が根拠になるのか
「契約書は作っていない」。共同事業のトラブルで、最もよく聞く事情の一つです。ここで押さえておきたいのは、契約の成立に書面は必須ではないということです。民法は、契約は、申込みに対して相手方が承諾をしたときに成立し、契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しないと定めています(民法522条1項・2項)。口頭の約束でも、契約は成立します。
共同事業にも、同じことが言えます。二人以上が、それぞれ出資をして共同の事業を営むことを約束していれば、書面がなくても、組合契約として効力が生じます(民法667条1項)。出資は金銭に限らず、労務を目的にすることもできます(同条2項)。したがって、「契約書がないから、何の約束もない」ということにはなりません。
問題は、約束の中身を証明できるかです。書面がないとき、約束の内容を裏づける材料は、次のようなものです。
- 出資の記録:振込の明細、通帳、現金の受け渡しの控え。誰がいつ幾ら出したかが残っているか。
- やり取りの記録:メッセージ、メール、音声の記録。出資の目的、利益を分ける割合、役割分担が書かれているか。
- 事業の資料:事業計画、見積書、請求書、領収書、帳簿、事業用口座の入出金。実際の運営の状況が分かるか。
- 第三者とのやり取り:取引先、賃貸人、金融機関に対して、二人がどのような関係として説明していたか。
- 分配の実績:利益を分けたことがあれば、いつ、どの割合で、どの計算で分けたか。
これらの材料を、時系列で並べ、約束の内容に関する記載を拾い出します。口約束の内容が、利益を分ける割合、出資の額、事業の範囲、期間、やめるときの扱いのどこまで特定できるかが、整理の出発点になります。特定できない部分は、民法の基準が補います。たとえば、損益を分ける割合を決めていなければ、各組合員の出資の価額に応じて定めます(民法674条1項)。利益または損失についてのみ割合を定めたときは、その割合は利益と損失に共通のものと推定されます(同条2項)。一方、基準が用意されていても、事業の範囲や期間、役割分担など、民法に基準のない点は、材料から読み取るしかありません。
確認の問い書面がないときに確かめること
二人以上が出資して、共同の事業を営む約束があったか。
この約束があれば、民法の組合の規定が基準になります。ないなら、貸付や業務委託など、別の関係として整理することになります。
出資の額と時期を示す記録は残っているか。
振込明細や通帳は、約束の中身を裏づける基本の材料です。現金での受け渡しは、受け取りの控えが重要になります。
損益を分ける割合について、やり取りの記録があるか。
記録がなければ、出資の価額に応じた割合が基準になります(民法674条1項)。
実際に、利益や費用はどう扱われてきたか。
分配の実績があれば、それが約束の内容を示す材料になります。
やめるときの取り決めはあったか。
決まっていなければ、脱退(民法678条)や解散の請求(民法683条)の規定が基準になります。
帳簿や資料を見せてもらえないとき:検査の権利と、契約書の開示条項
相手が事業のお金を管理していて、収支が見えない。見せてほしいと伝えても、応じてもらえない。この状況で確認できる根拠は、二つあります。
一つ目は、民法の検査の権利です。各組合員は、組合の業務の決定および執行をする権利を有しないときであっても、その業務および組合財産の状況を検査することができます(民法673条)。資金を出しただけで、運営に関わらない出資者であっても、事業の状況を調べる権利は、条文に基づいて認められます。
二つ目は、業務を執行する側の義務です。組合の業務を決定し、または執行する組合員には、委任の規定のうち第644条から第650条までが準用されます(民法671条)。そこには、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務(民法644条)、請求があればいつでも事務の処理の状況を報告し、終了後は遅滞なく経過と結果を報告する義務(民法645条)、事務の処理にあたって受け取った金銭その他の物を引き渡す義務(民法646条)、引き渡すべき金額や、その利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その日以後の利息を払い、なお損害があれば賠償する義務(民法647条)が含まれます。
条文は、検査と報告の基本を与えていますが、具体的な方法は決めていません。いつ、どこで、どの資料を、どの形で見せるのか。帳簿の写しをもらえるのか。事業用の口座の入出金を直接確認できるのか。契約書に開示の条項がなければ、権利はあっても、実際の開示の方法をめぐる争いになりがちです。契約書の書き方としては、次のような条項が役に立ちます。
書き方の例帳簿・資料の開示
- 運営者は、事業の帳簿、預金通帳の写し、請求書、領収書その他の証憑を、事業の本拠地に整えて保管し、他の当事者の請求があったときは、請求の日から○日以内に、閲覧または写しの交付により開示しなければならない。
- 運営者は、毎月末日から○日以内に、前月の収入、支出、預金の残高を記載した報告書に、通帳の写しを添えて、他の当事者に交付する。
- 前二項の開示に係る資料の保存期間は、事業の終了後○年とする。
- 運営者が正当な理由なく前各項の開示を拒んだときは、他の当事者は、その旨を書面で催告し、催告から○日を過ぎても開示がないときは、第○条の脱退または解散の請求の手続に入ることができる。
開示の期限、方法、保存の期間、拒んだときの手続を併せて書いておくと、権利が実際に使える形になります。数値は例として伏せています。
開示を求めるときの注意として、感情的な要求は、かえって関係をこじらせます。請求の対象(期間、口座、資料の種類)を特定し、書面で、期限を置いて求めると、応じる側も対応しやすくなります。これは交渉の代理ではなく、契約書と条文に基づく資料の請求の整理です。開示を受けたら、出資金の入金、事業用口座への入出金、費用の内訳、運営者や関連会社への支払、利益の計算を、契約書の定めと突き合わせます。突き合わせの視点は、費用負担の面は費用負担のページ、口座の管理の面は帳簿・口座のページに詳しく書いています。
出資金を返してほしいとき:解除ではなく、脱退・除名・合意・解散の筋道
出資したお金が戻ってこない。事業が思うように進まず、出資金を返してほしい。共同事業のトラブルの中心は、結局ここに行き着きます。契約書の書き方と条文の面から、出資金の返還を求める筋道を整理すると、民法の組合では、次のようになります。
まず、出資金は、貸したお金ではありません。出資をすると、各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属します(民法668条)。出資金は事業の財産になり、出資者が事業の途中で自由に取り戻せるものではありません。また、組合財産については、清算の前に分割を求めることもできません(民法676条3項)。
次に、相手が約束を守らないことを理由とする契約の解除は、できません。民法は、組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができないと定めています(民法667条の2第2項)。通常の契約なら、相手が約束を守らないとき、契約を解除して支払った代金の返還を求める筋道がありますが、組合ではその筋道が取れません。
そのうえで、出資金を実質的に取り戻す道は、次のいずれかで整理することになります。
出資金を取り戻す筋道(民法の組合の場合)
| 筋道 | 根拠 | 戻るのは何か |
|---|---|---|
| 合意による解散・終了 | 全員の同意で解散できる(民法682条4号) | 清算を経た残余財産の分配。出資額と同じとは限らない |
| 合意による脱退・持分の買取り | 契約の自由。払戻しは脱退の時の財産の状況に従う(民法681条) | 合意した買取りの代金または払戻し額 |
| 任意の脱退 | 期間の定めがなければいつでも。不利な時期は不可(民法678条1項) | 脱退の時の財産の状況に基づく持分の払戻し |
| やむを得ない事由による脱退 | 期間の定めがあってもできる(民法678条2項) | 同上 |
| 相手方の除名 | 正当な事由があるとき、他の組合員の一致で(民法680条) | 除名された人の持分の払戻し |
| 解散の請求 | やむを得ない事由があるとき(民法683条) | 清算を経た残余財産の分配 |
表から分かるように、どの筋道でも、戻るのは「出資したのと同じ額」ではなく、「その時点の事業の財産の状況に基づく額」です。事業が赤字で財産が減っていれば、戻る額は出資額を下回ります。ですから、出資金の返還を主張する場面では、契約書に「出資の返還」や「元本保証」の趣旨の定めがあるかが、決定的に重要です。そのような定めがなければ、出資は事業の損益とともに動くものです。
ここで、「出資」と書きながら実質が貸付に近い契約は、別の問題を生みます。出資の金額の全額の返還請求、損益に関係のない確定した配当、返済期日のような定めを並べた契約書では、出資か貸付かの性質が読み取れなくなります。この見分けの詳細は、別のガイドで扱います。本ガイドでは、契約書の面から、出資と決めたなら、払込、損益の割合、払戻しを出資の考え方でそろえるべきだと整理するにとどめます。
出資者が運営者の事業のために出資する匿名組合の場合は、筋道が異なります。存続期間の定めがなければ、営業年度の終了時に解除でき、六箇月前の予告が要ります(商法540条1項)。やむを得ない事由があるときは、いつでも解除でき(同条2項)、契約が終了したときは、営業者は出資の価額を返還し、ただし損失で減った場合は残額を返せば足ります(同法542条)。型によって、出資金の戻り方は変わります。まず自分の共同事業がどちらの型かを、契約書の中身から確認します。
利益が出ない、使途が疑わしいとき:定義と費用の条項に戻る
事業は動いているのに、利益が分配されない。売上はあるのに、利益が出ていないと言われる。このとき、確認する順番は、まず契約書の「利益」の定義、次に控除できる費用の範囲、最後に実際の支出です。
利益の定義が書かれていなければ、利益とは何かから、争いになります。売上から何を引くのか。運営者への報酬や、運営者の関連会社への支払は引けるのか。引けるとして上限はあるのか。事前の承認は要るのか。これらが決まっていないと、運営者の側は広く引いて利益を小さく見せることができ、出資者の側はそれを疑う構図になります。定義の書き方は利益の定義のページ、費用の範囲と上限の書き方は費用負担のページで扱っています。
資金の使途が疑わしい場合は、契約書の使途制限の条項と、実際の支出を突き合わせます。使途制限の条項があれば、目的外の支出は契約違反の疑いとして整理でき、なければ、組合の業務を執行する人の善管注意義務や報告の義務(民法644条、645条)、事業の財産と自己の財産を混ぜないことなどの一般的な基準から確認します。個人的な支出が事業の経費として処理されていれば、控除できる費用の範囲に入るかどうかが論点です。
書き方の例(一般的な例) 利益が出ないときの確認の仕方
利益の定義
理由「必要経費」だけでは何が入るのかが分からず、利益が運営の都合で変わります。限定列挙と上限と承認の手順で、数字を確かめられる形にします。
使途の確認
理由「適切に」では使途違反かどうかの線が引けません。目的と金額の基準を書いておけば、違反の有無を後から確認できます。
違約金・競業避止の条項が争いになるとき:効力を左右する要素
契約書に違約金や競業避止が書いてあり、それが争いになることがあります。違約金は、債務を果たさなかったときに支払う金額をあらかじめ決めておく定めです。民法は、当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができ(民法420条1項)、賠償額の予定は、履行の請求または解除権の行使を妨げず(同条2項)、違約金は賠償額の予定と推定される(同条3項)と定めています。
つまり、違約金は原則として、契約書に書いたとおりに有効になります。ただし、どんな金額でも有効になるとは限りません。公の秩序または善良の風俗に反する法律行為は無効とされるため(民法90条)、事業の規模や想定される損害に比べて著しく過大な違約金や、制限の範囲が広すぎる競業避止は、効力が争われる余地があります。どこまでなら有効かは、個別の事情で判断され、条文から機械的には決まりません。条文と裁判例の確認が必要です。契約書の面からいえる、効力に影響しやすい要素は、次のとおりです。
- 金額と損害の釣り合い:違約金が、違反によって生じ得る損害と、どの程度の関係にあるか。損害と無関係な算定は、疑義を受けやすくなります。
- 違反の態様との対応:軽微な違反と重大な違反が同じ金額になっていないか。違反が重なるたびに累積する仕組みは、合計額が過大になりやすくなります。
- 期間と地域と範囲:競業避止では、制限が実際の営業の範囲を超えていないか。
- 代償の有無:制限を受ける側に、何らかの対価があるか。
- 契約全体のバランス:一方の当事者にだけ重い義務が課され、他方は軽いままという構造になっていないか。
これらの要素は、争いが起きてから確かめるより、契約書を作るときに意識するほうが効果的です。すでに契約書がある場合は、定めの内容を見直し、必要なら次の節の変更の覚書で、金額や範囲を現実的な水準に整えることを検討します。
合意書・変更の覚書で整理する:続ける、変える、終えるの三つの型
揉めた後の整理は、結局、続けるか、条件を変えて続けるか、終えるかのどれかになります。それぞれに合う書面があります。
整理の型と、書面の中身
| 型 | 書面 | 主に書くこと |
|---|---|---|
| 続ける | 確認の覚書 | 過去の分配と費用の確認、帳簿の開示の取り決め、今後の報告の方法 |
| 条件を変えて続ける | 変更の覚書 | 利益の定義、費用の上限、承認の手続、役割分担、出入りの定めの変更点 |
| 終える | 合意解約書、清算の合意書 | 終了日、清算人、債権債務の整理、残余財産の分け方、競業の制限、秘密の保持 |
どの型でも共通して書くべきなのは、現在の状況の確認です。誰がいつ幾ら出資したか。これまで幾ら分配したか。未払の費用や立替金はいくらか。争いになっている点は何か。この確認を飛ばして、先の取り決めだけを書くと、過去の食い違いが残ったまま、新しい契約が始まります。
書き方の例変更の覚書(利益と費用の整理)
- 甲および乙は、○年○月○日付の共同事業契約(以下「原契約」という。)の第○条から第○条までを、次のとおり変更することに合意する。
- 原契約第○条の「利益」は、事業の売上から、別紙に列挙する費用を差し引いた残りとする。別紙に定めのない費用は、他の当事者の事前の書面による承認がなければ、控除できない。
- 運営者に対する報酬は、月額○円を上限とする。運営者は、毎月末日から○日以内に、前月の収支報告書および通帳の写しを、他の当事者に交付する。
- 甲および乙は、本覚書の日までの利益の分配および費用の精算について、別紙の計算書のとおり確認し、本覚書に定めるほか、互いに債権債務のないことを確認する。
- 本覚書に定めのない事項は、原契約による。原契約と本覚書が抵触するときは、本覚書が優先する。
過去の精算の確認は、争いを蒸し返さないためにも、対象の期間と範囲を明確に書きます。数値は例として伏せています。
書き方の例合意解約と清算の合意
- 甲および乙は、○年○月○日をもって、原契約を合意により終了させる。
- 清算人は、○とする。清算人は、終了の日から○日以内に、事業の資産と負債の一覧を作成して交付し、以後、毎月、清算の状況を書面で報告する。
- 残余財産は、全ての債務の弁済、清算の費用の支払および当事者の立替金の返済の後に、○対○の割合で分配する。現物で分配するときは、第○条の評価人の評価額による。
- 甲および乙は、終了の日から○か月間、本事業と同種の事業を、○○の範囲で行わない。本事業の秘密情報は、終了後も○年間、他に開示しない。
- 甲および乙は、本合意書に定めるほか、互いに債権債務のないことを確認する。
清算の合意書でも、評価人、期限、報告の義務、制限の範囲を書いておくと、合意の後の進み方が確かめられます。
合意書を作るときは、全ての当事者が、内容を理解して署名することが前提です。一方に圧力をかけたり、事実を隠したりして得た合意は、後から効力を争われるおそれがあります。内容は、争点ごとに、短い条文に分けて書き、数字は実際の記録と突き合わせます。書面を作る目的は、相手を負かすことではなく、今後の取り決めを確かな形に残すことです。
起きがちなこと:揉めた後の確認で、見落としやすい場面
トラブルの場面で起きがちなこと
- 書面がないまま事業が続いたとき出資の額は記録があるが、利益を分ける割合は口約束で、記憶が食い違う。民法の基準(出資の価額に応じた割合)を示されて、自分の理解と異なると感じる。記録がない部分は、基準で補われます。
- 帳簿を見せてもらえないとき検査の権利があることは条文から分かっていても、開示の方法が決まっていないため、見せる側が一部だけを出し、見る側が全体を疑う構図になる。
- 出資金を返してほしいとき相手が約束を守らないので解除して返金を求めたいと考えるが、組合では、他の組合員の債務不履行を理由に解除できない。戻る額が、出資額ではなく、その時点の事業の財産に基づく額になる点も、想定と違う。
- 利益が出ないと言われたとき利益の定義がなく、運営者への報酬や関連会社への支払が費用に入っている。上限も承認の手続もないため、どこまでが妥当な費用かの線が引けない。
- 違約金や競業避止を主張されたとき金額や制限の範囲が大きく、有効かどうかが分からない。一方で、契約書に書いてある以上は、無視できない。効力に影響する要素を整理して臨む必要がある。
揉めたときの確認の点検
- 契約書、覚書、メッセージなど、決まっていたことを示す資料を集めたか。
- 出資、分配、費用の実際の記録を、時系列に並べたか。
- 自分の共同事業が、組合か、匿名組合か、貸付に近いものかを、契約書の中身から確かめたか。
- 帳簿の開示を求めるときは、対象と期限を特定して、書面にしたか。
- 出資金の返還を考えるときは、解除ではなく、脱退・除名・合意・解散の筋道で整理したか。
- 違約金や競業避止の条項が争点なら、金額と範囲が釣り合っているかを確かめたか。
- 続ける、変える、終えるのどれにするかを決め、その型に合う書面にまとめたか。
よくあるご質問
契約書を作っていませんが、共同事業の約束は有効ですか。
有効になり得ます。契約は、申込みに対して相手方が承諾したときに成立し、成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成などの方式を要しません(民法522条)。二人以上が出資をして共同の事業を営む約束があれば、書面がなくても組合契約として効力が生じます(民法667条1項)。ただし、約束の中身を証明する材料(振込の記録、メッセージ、事業の資料)が重要になります。
出資者でも、帳簿を見せてもらえますか。
組合に当たる共同事業では、業務の決定や執行をする権利がない組合員でも、業務と組合財産の状況を検査できます(民法673条)。業務を執行する側には、請求があれば事務の処理の状況を報告する義務もあります(民法645条、671条)。実際に開示を受けるには、期限と方法を決めた条項を契約書に置いておくのが効果的です。
相手が約束を守らないので、契約を解除して出資金を返してほしいのですが。
民法の組合では、他の組合員の債務不履行を理由として組合契約を解除することはできません(民法667条の2第2項)。出資金を取り戻す筋道としては、合意による脱退や解散、任意の脱退(民法678条)、除名(民法680条)、解散の請求(民法683条)があります。いずれも、戻るのは、その時点の事業の財産の状況に基づく額で、出資額と同じとは限りません(民法681条1項)。
契約書の違約金の額が大きいのですが、必ず払わなければなりませんか。
違約金は賠償額の予定と推定され(民法420条3項)、契約書に書いてあれば原則として有効です。ただし、事業の規模や想定される損害に比べて著しく過大な額は、公序良俗に反するとして効力が争われ得ます(民法90条)。有効かどうかは個別の事情で判断されるため、条文と裁判例の確認が必要です。契約書を整える場面では、金額と損害の釣り合い、違反の態様との対応を見直します。
揉めている共同事業を、契約書でやり直すことはできますか。
当事者全員が合意すれば、続ける、条件を変えて続ける、終えるのいずれの形でも、書面でやり直せます。続ける場合は確認の覚書、条件を変える場合は変更の覚書、終える場合は合意解約書や清算の合意書にまとめます。どの型でも、現在の出資、分配、未払の費用を確認する条項を入れて、過去の食い違いを残さないのが基本です。
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本ページは一般的な情報提供です。共同事業の内容、出資の形、当事者どうしの関係によって、必要な定めは異なります。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 中小企業庁